その他いろいろ

超電導複合線材のひずみ分布および応力負荷下の破壊挙動

高温超電導複合線材はセラミックスである高温超電導層とAgなどの常伝導材料の複合構造を持っているため、線材への応力負荷により超電導層が受ける応力状態は温度や複合構造に依存する複雑なものになる。AgシースBi2223超電導多芯線材にステンレスシースを接着して圧縮予歪付加をした超電導複合線材に対して軸方向に引張変形を施した。この変形下での複合体中のBi2223繊維の長手(電流)方向のひずみ状態を放射光でその場測定し、ステンレス層を除去した複合線材の場合と比較したものが左図である。ステンレスによる予歪効果が明確に表れている。また、ステンレス強化線材の場合、複合体歪が大きくなるとBi2223繊維は多重破断状態となり、ひずみ量が飽和する。コイルなどで重要な曲げ負荷をかけた状態での超電導層のひずみを評価したのが中および右図になる。引張荷重下での変形から多重破断に至る外部(平均)ひずみと超電導層のひずみの関係や、曲げ変形における線材の外周側、内周側での超電導層の破断状況の非対称性などが測定された。左図はステンレスシースAg/Bi2223多芯材の引張中のBi2223層のひずみ。ステンレスによる予備圧縮効果が認められる。曲げ変形では引張側(外側)での優先多重破断が観察される。
H.Okuda et al., Scr. Mater. 58(2008) 687.(曲げ)
H.Okuda et al., Scr. Mater. 55(2006)691.(ステンレスシース複合材、引張))
H.Okuda et al., Physica C 411(2004)114.(引張)


X線集光単結晶

SiやGe単結晶は融点直下で比較的自由な成型が可能であることが中嶋らにより示された。(K.Nakajima et al.Nature Materials 2005) この手法を用いて作成した湾曲半導体結晶素子の組織評価およびX線回折集光評価を進めている。H.Okuda et al., J.Appl.Cryst.39(2006)443., 点集光素子による直線偏光集光結晶により、励起X線の散乱の効果を大きく低減できることを示した。APEX3(2010)046601

化合物半導体薄膜中の相分離挙動

光半導体や高速/高周波用途に使われる化合物半導体は格子定数の異なる複数のIII-V族の組み合わせでバンドギャップと格子定数を制御する。正の混合エンタルピーをもつため、ひずみフリーの条件では相分離するが、エピタキシャル成長膜では相分離が抑制される。このような振舞いが現実の成長条件では転位密度の高い基板上では相分離、低欠陥密度基板では単相の状態で結晶成長が進む。これはCahnのCoherentSpinodalとChemicalSpinodalの概念で説明できる現象である。H.Okuda et al., Appl.Phys.Lett.56(1990)337. 歪拘束による組成変動の抑制を前提に濃度揺らぎの期待値を計算すると、例えばInP格子整合線上のInGaAsP合金では3次元拘束では組成揺らぎは格子整合線方向と垂直な組成揺らぎは極端に抑制されることなどが計算からわかる。