Tender X-rays領域の散乱

Mg,Al,SiのK吸収端での異常小角散乱

 波長が5~10Å程度のX線(エネルギーで1~2keV程度)は空気中では容易に吸収されてしまうため、散乱実験ではこれまであまり積極的に利用されていません。軽合金や生体/高分子材料ではこの波長領域に吸収端をもつ元素としてNa,Mg,Al,Si,P,Sなどが挙げられますが、吸収端での共鳴散乱効果を利用することによって通常波長のX線では測定が困難であった実験が可能になります。我々は2009年にImagingPlateを使った試行的な実験に成功して以来、GISAXS測定ではSiの異常分散効果を利用してSiと高分子膜の屈折率差をなくす(Si基板透明化実験、H.Okuda et al., J.Appl.Cryst. 2012)、透過散乱測定ではMgの吸収端を利用したAl-Mg合金のGPゾーンの評価(H.Okuda et al., APEX 2019)などの測定を実現しており、この波長領域を利用した散乱実験の汎用化を目指しています。図1はAl-K吸収端での異常小角散乱測定(H.Okuda et al., J.Appl.Cryst.49(2016)1803)、図2はMg-K吸収端での異常小角散乱測定の結果で、2次元SAXS測定によりAl3Mg析出物の形状異方性が観察されています。(APEX12(2019)075503.)

Al-K吸収端でのAl-Zn合金のASAXS測定結果。H.Okuda et al., J.Appl.Cryst.2016)


Tender領域での小角散乱絶対強度測定に向けて

Under Progress PF-13A  ASAXS+SDD 2次元異常小角散乱測定と蛍光の同時測定装置を開発・製作し、軟X線ビームラインに持ち込んで計測をしています。現在Al-Mg-Si系析出物の解析を進めています。