散乱トモグラフィー

多層材や多芯材、接合構造などの組成/析出構造マクロ傾斜領域の評価

マイクロビームX線を使い、散乱強度分布をトモグラフィーの手法によって解析することにより、ビームサイズより数桁小さなナノ構造がX線をスキャンした範囲にどのように分布しているかを可視化することができる。理想的な積層材であれば一次元の走査測定で分布を評価できる(S.Lin et al, Mater. Trans.2020)が、より複雑な形状の断面分布を算出するためには散乱トモグラフィー法が必要となる。
実装材料として問題となる材料サイズ領域に対してその特性(強度など)を決める微細構造のスケールがはるかに小さい場合、微細構造を直接可視化する代わりに材料サイズとして十分な分解能で各位置での微細構造の定量評価をすることは現実的な解決策である。散乱トモグラフィーは材料の構造分布として問題にするμmレベルの分解能で、強度を決定するnmレベルの組織の分布状態を定量可視化する方法である。図1のように試料からの散乱を計測し、ボクセル帰属の散乱強度を算出する。
 図2はAl合金のサンドイッチ材に対する通常(吸収)トモグラフ像と散乱トモグラフ像を示している。散乱トモグラフ像は半径1~2nmの析出物の析出量を表しており、材料の強度を決める1nm程度の析出物がmm程度のサイズにわたってどのように分布しているかを可視化することができた。(H.Okuda et al., APEX 2019)

さらにボクセルあたりのSAXS強度を絶対強度化し、散乱強度分布の定量化から析出構造分布の定量解析をおこない、相互拡散領域を含むAlMg/AlZn/AlMgおよびAl/ALZn/Al構造のナノ組織分布を可視化した。(S.Lin et al., Nucl.Instr.Meth.B,2024)Al/AlZn/Al 3層材の吸収断層像(上左)のX印位置のボクセルからの分解SAXS強度(上右)より平均サイズ(下左)と析出量分布が得られ、析出強化理論から強度〈下中:Hv)の分布を評価できる。この析出物体積率では単純なギニエ近似と散乱強度Fitting(下右)から計算する平均半径は5%以内の精度で一致する。