Al-Li合金の規則化と相分離のキネティクス
Al-Li合金はコングルエントオーダリングとスピノーダル分解の機構がLaughlinやKhachaturyanらによって指摘されて注目を集めた。その定量的理解を目指し、組成変動を反映する小角散乱とL12規則ドメインを反映する100散乱プロファイルのIn-situ同時測定をおこなった。図1はその様子を示している(H.Okuda et al., proc.PTM94, J.Appl. Cryst. 1997 他)
DSCで観測されたL12析出物(δ’)とは異なる安定性を持つ組織について、小角散乱と100プロファイルの関係(図2)の検討から比較的広範囲に広がった規則ドメインが組成変動(析出)に先立って認められるものの、組成変動とは弱いカップリングを持っており、相変態初期の規則ドメインサイズは小角散乱でとらえられる粒子間距離とほぼ等しくなること等が明らかになった。
L12型相分離合金の相変態過程のMCシミュレーション
小角・規則反射同時測定の結果を解釈するためのアプローチとしてMonteCarlo法によるL12規則構造形成過程のシミュレーションを行った。Al-Liと類似した状態図を示すことが報告されている相互作用を使い、ランダム(固溶体)状態からの組織形成過程を実験的に観察される小角散乱と100回折相当の情報と同時に、実空間での規則構造の発展過程として調べた。逆格子空間での小角散乱と100回折の関係はAl-Liの実験で報告されているものと整合する結果が得られ、その実空間での変化については低次元規則化ネットワークの高次元化(立体化)に伴う組成変動という描像が得られた。(H.Okuda et al., Acta Metall. Mater 1993など)